〔第1話〕 ラジオの新たなかたち・私論

**民放ラジオの立ち位置を再認識するために〈Part 1〉**

ブログ久しぶりの再開にあたって
当ブログはしばらく時間をいただいた。レポートを進める準備ができたので、タイトルを「ラジオの新たなかたち・私論」と多少変えて、前回までの内容を引き継ぎながら、ここでは民放ラジオを中心にレポートしたい。いまラジオはオールドメディア化しつつあり、また衰退の方向へ歩んでいる。再び社会から注目され、影響力を発揮するメディアへ再生するためには、“どのように取り組んでいったらいいか”をテーマに考えていきたい。ラジオに関心のある方々の参考になれば幸いである。


■ 民放ラジオの新たな方向性を考えるための時代認識について

 バブル崩壊以降の日本社会を表現するのに「失われた10年」とか「失われた20年」ということばがあった。考えてみると、民放ラジオほどこのことばにぴったりするものはないと思える。前半の10年、すなわち1990年代の民放ラジオはバブル期の残影もあり、経営的に安定していたが、経済成長は止まり、時代は大きく変わり始めているのに、民放ラジオはなかなか気付かなかった。歴史という大河の潮流が川底から大きく変わり始めている重要な時期だったというのに・・・。

 そして後半10年、2000年代はその潮流の変化がさまざまな分野から顕在化してくる。それは社会システムの変革という形で全体が変わり、そして各分野へ広がっていく。産業構造の変化が経済環境を変え、停滞経済が政治環境や社会の環境を変えていった。経済の低迷、政治の混乱、社会の硬直化など、どれを取っても山積した問題課題が保留され、世間に“閉塞感”が漲っていったのである。これらの課題は、時代変革に見合った新たな社会づくりという“国家目標”というべき道標がなくては解決しないものばかりである。

 こうした環境のなかで、民放ラジオはリスナーのラジオ離れと収益低迷が著しくなる。20年で営業収益はラジオ全体で半減し、リスナーのラジオ離れも止まらない。この後半10年の間に民放ラジオは、再生のために具体的政策を実践せねばならなかったが、残念ながら非常に淋しい対応しか取れず、結果として民放ラジオの経営危機が増大していった。現在に至っては変化に敏感な若者がラジオから遠ざかり、またラジオということばすら知らない世代も登場し、いよいよ危機感が増幅しているのが現在の民放ラジオ界である。

 そこで、ここでは民放ラジオの業界全体の再生の方向性を見出すために、1つの「ラジオビジョン」という目標を設定し、その目標の実現に必要な幾つかの構造改革を提示してみたいと思うが、目標を設定するにあたっては、民放ラジオを取り巻く時代環境を明確に把握し、そこから導き出されるラジオの新たな可能性を明らかにすることが必要と思われる。以下3つの分野から概括してみよう。

〈1〉 歴史的転換期にある21世紀初頭と民放ラジオ
〈2〉 これからの社会像“成熟社会”と民放ラジオ
〈3〉 地域社会・コミュニティの再構築と民放ラジオ

 新たな時代の「ラジオビジョン」を考えるには、現在我々が立っている時代認識をしっかり把握しないと次なる一歩が踏み出せない。一歩踏み出すには“次なる社会像”をしっかり見詰めた上で、そこから導き出される生き生きとした人間の生活のありように注目しなければ、これからの民放ラジオの姿が浮かんで来ない。そうした背景を理解した上で上記3点にスポットを当ていこう。(つづく)



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