第68話 あるCFMパーソナリティの経験則 その2

■ 今回は前回に引き続き、レディオ湘南(エフエム藤沢)の番組「ざいつきげんの音楽鍋」を担当されている財津紀元さんが指摘している、CFM局のパーソナリティの番組づくりについてご紹介いたしましょう。今回はパーソナリティのディレター(番組制作)という役割に必要なポイントです。


(1) 誰に聴いて欲しい番組か、ターゲットイメージをしっかり持つこと
(2) 番組を通して何を伝えたいのか、テーマを決めること
(3) 放送時間を考えましょう
(4)  ファンづくりは自らの手で
(5) 地域の情報(街ネタ)を伝えるだけが地域密着型ではありません
(6) 地域の文化や歴史を調べ、伝えるだけが地域密着型ではありません
(7) 自分だけの情報源を持ちましょう
(8)  選曲は遊び心でひと工夫
(9) コミュニティFMラジオ局はサービスエリア内みんなのラジオ局です


CFM局は、パーソナリティが番組を創る場合がほとんどです。ということは、パーソナリティが番組制作の企画・構成・演出も担当しているということです。それは当たり前・・・。しかしこの当たり前のことが非常に難しいのです。「しゃべること」と「番組の流れ」を創ることとは、一人パーソナリティにとって相反するところがあるからです。「しゃべりたい」しかし「しゃべれない」というジレンマです。番組の全体から考えると、魅力あるおしゃべりを音楽と共にリズムよく進めることが番組というものです。そこに番組構成と番組演出が生まれてきます。この構成と演出を具体的に指摘しているのが財津紀元さんの9項目です。

(1)は誰に向って番組を放送するのか、ということ。CFM局の番組を聴いていると、このターゲットをパーソナリティとしてどれだけ認識して創っているか、疑問を感じることが多くあります。番組編成上のターゲット(大きな輪)と番組ターゲット(小さな輪)、この2つの輪がリンクして初めてターゲットイメージが出来上がります。

(2)はその日その日伝えたい情報や話題があると思いますが、結構2つや3つの話題を一気にしゃべってしまい、この人は何を伝えたかったのかしら、と思うことしきりです。

(3)放送時間とは朝・昼・午後・夕方・夜・深夜と1日24時間の流れのなかで時間の風物詩があり、社会の流れがあります。こうした時間の流れこそ生放送では大切なのです。

(4)ファンづくりは、広域ラジオ番組では番組内容やパーソナリティの魅力で生まれます。CFM局の場合は、地元の知り合いから知り合いに、そして輪が広がって広域ラジオでは考えられない密度の濃いファンが誕生します。ファンづくりは自らの手で、ということはそういうことなのです。

(5)と(6)は、自らの街を自らの足で確かめて、立体的な街として掴むことが大切だ、ということです。住んでいる人々の息吹を伝えて行くことこそCFMラジオなのです。

(7)は自分の足で掴んだ土地柄をその土地に住む人から情報提供してもらうこと、すなわち自ら情報源をつくりことです。

(8)選曲は遊び心とひと工夫、とはよく言ったものです。これ大人の遊びですね。パーソナリティはこの曲が好きだ、好きな曲を沢山している、というだけで選曲はできません。選曲とは番組で話すお話の内容や特集などに応じて千変万化、変わるものです。したがって沢山の分野(ジャンル)を知っていなければならないし、選曲する状況に応じて変わります。分り易くいうと「ご自分の粋なファッションを楽しむ」ということです。今日は晴れ、今日は雨、相手の人は美しき人?場所はどこ?・・・そうしたシチュエーションでファッションを楽しむように、選曲も同じです。しかしである!一朝一夕にできないところがまた選曲。財津さんが大人の遊びといったのは、こういうことではないでしょうか。でも選曲って、嵌まってしまったっら抜けられませんよ。

(9)エリア内は「みんなのラジオ」とは、若い人には分かり辛いかも知れません。ラジオが「みんなのラジオ」だった昭和30年代(1950年代)いまから50年も前の時代はラジオがみんなのものでした。しかし、AMラジオ時代、FMラ放送時代、情報ラジオ時代を経てラジオ多局化時代へと変化した今、「みんなのラジオ」とは程遠い時代・・・・。ところがコミュニティFM放送が登場してきた今、もう一度「みんなのラジオ」復活してきています。「子供の作文と朗読番組」で親子が一緒に聴いたり、俳諧老人のラジオ捜索で同じ家庭では関心を持って聴き、情報提供してくれるとか、「速報赤ちゃんこんにちは」という赤ちゃん誕生情報など、地域でのお友達同士が連絡を取り合ったり、と「みんなのラジオ」が復活しています。財津さんはこうした地域ラジオこそ「みんなのラジオ」といっているのだと思います。

 パーソナリティの皆さん、財津さんの指摘する大事なポイントを、自分の番組に置き換えて、もう一度点検してみてはいかがでしょうか。(了)