第66話 FM戸塚の開局とNHK朝ドラ「つばさ」

□ NHK朝の連続ドラマ「つばさ」が4月からスタートしました。そして、今年の前期には「FM戸塚」をはじめ、コミュニティFM放送局(CFM局)が全国に5局ほど開設されました。この二つは何の関係もないのですが、ただ「つばさ」の内容が主役「つばさ」の生き方と「CFM局」が大きな関わりを持っているということです。そこで、今回はドラマ「つばさ」のなかで開局したコCFM局「FMぽてと」と5月に開局した「FM戸塚」を通して、CFM局の開設を比較してみたいと思います。


■ ドラマ「つばさ」のCFM局のイメージ

 ドラマのCFM局に関する内容をここで簡単に触れておきましょう。ドラマの設定は〔川越市〕。ある行政出身のやり手ビジネスマンが川越市にCFM局を開設し、情報発信基地にしよう、と川越市内を奔走します。放送電波の免許を取得すべく、計測アンテナをもって自から潜在電界強度の調査をしたり、申請作業を行う一方、出資者を募って駆け回ります。やがて予備免許が交付され、ビルの屋上から試験電波を発射します。そして開局を迎えます。局の愛称は「FMぽてと」と決まり、開局特番の準備をはいります。ところがスタッフの間で意見が合わず紛糾し出します。ここまでが「FMぽてと」に関する5月13日(水)までの放送内容、ドラマはスタートして1ヶ月少々、これからどんな展開になるかは分りません。これまでの放送はドラマとして受け止めていれば、何の問題もないのですが、CFM局がはじめて公の放送で取上げられ、一般の方々に知ってもらう非常によい機会ではあります。それだけに、本来あるべきCFM局の姿が、本来と異なったイメージで取上げられると困ります。その点について、気づいたところを少々指摘してみたいと思います。

 ドラマ番組であることを十分考慮していても、CFM局づくりの安易さが気になります。実際は隣近所のご協力も必要ですが、地元の組織、団体、企業など、その地区で大きな役割を果たしている団体の協力が不可欠です。協力があるからこそ、行政情報や市民情報が集まってくるのです。この辺もあっさり描かれていて「何んだ、CFM局って簡単に創れるんだ!」といったイメージを抱かせます。また開局の特番づくりも、内輪の人間だけで創ってしまうような印象です。もう少し市民を巻き込んだ開局の仕方、例えばボランティア募集とアナウンス練習とか、自治会、婦人会、趣味の会など、市民が積極的に参加する姿を取り入れられなかったのか。経営で一番困るスポンサーについては経営ですから、この辺も地元大手企業に協力が得られるシーンがほしかったですね。要は市民のために市民がつくるCFMの姿が浮かんで来ないのです。CFM局は地元で社会的文化的存在として高い評価が得られることがメディアとなるのです。それに比べて、ドラマは学校放送の延長みたいなイメージです。CFM局って、こんなレベルなの、と視聴者に受け取られてしまします。この辺がCFM局をよく知っているものにとって、残念だな、という感想を抱きます。


■ 「FM戸塚」の開局と比べると・・・

 朝ドラ「つばさ」に比べて、なるほどこれが「コミュニティFM放送局」づくりなのか、と改めて認識したのが、開局したばかりの「FM戸塚」です。ご紹介しましょう。「FM戸塚」は4月29日、ゴールデンウィークの初日に」は開局しました。この開局準備はすでに2年前からスタートしていたそうで、東戸塚駅前再開発のプロジェクトである「東戸塚西地区街づくり会」が中心となって免許申請を行い、今年3月に予備免許を得て、試験放送、そして開局に漕ぎ着けています。CFM局設立の種類でいえば、自治体主導型、商工会議所主導型、地域メディア主導型、地元大手企業主導型など、さまざまな形がありすが、ここは純民間による設立。戸塚区のある地域の賛同者が設立に動いた形態です。しかし、このプロジェクトは戸塚区のできるだけ広い分野から賛同を仰ぐべく声をかけ、出資者は地元事業者や個人を含めて113株主に及んでいます。街のラジオ局を創り上げるには、地元に広い方々から支援を仰ぐ必要があるからです。ここで放送局のスペックに触れておきましょう。

  (1) 放送周波数  83.7 Mz    出力 10W
  (2) 資 本 金  5,000万円    社員数(契約含)5人
  (3) 番組スタッフ 約30人
  (4) スタジオ   横浜市戸塚区川上町91番地 モレラ東戸塚2階
  (5) 送 信 所  同 モレラ東戸塚屋上
  (6) 聴 取 地 域  戸塚区とその周辺 聴取人口は約35万人〜40万人
  (7) 取 締 役  齋藤 正徳(代表取締役社長)  奥寺 康彦(横浜CF会長)
         横尾 正明(元NHKア) 早野 宏史(元横浜マリノス監督)
         深野 孝男    飯島 秀吉    福田  稔
                                 7名

 10Wの出力は20Wのサービスエリアより狭いことは事実ですが、湘南地域は地形が入り組んで関係もあり、戸塚区とその周辺には十分届くエリアを有しています。ここで、敢えて「FM戸塚」を取上げたかったのは、朝のドララで描かれているような、誰もが簡単に免許を得られ、放送ができるものではありません。開設する放送局は地元の広い分野から賛同や支援を仰がねえばなりません。放送開始後は更に市民からの情報や話題、市内の組織団体からは行政情報、学校情報、福祉情報などのさまざまな情報提供が必要ですし、放送局と市民リスナーの交流やパブリックアクセスを含めてさまざまな意見や問題も取上げていかねばなりません。学校放送の延長のようなイメージがする放送中のドラマの「FMぽてと」とでは、現実はかなり違うということを強調したかったのです。

 「FM戸塚」は東戸塚駅西口の直ぐ出た高層ビル「モレラ」の2階にスタジオがあります。駅ホームからも、駅に出入りする人にはスタジオが見える「サテライト・スタジオ」となっています。リスナーがスタジオ訪問するにも便利なところで、開局以来、訪問客が耐えない様子です。上記のように役員に「堀尾正明氏」「早野宏史氏」「奥寺康彦氏」といった知名人がおられ、番組に協力されています。今後が大いに楽しみです。頑張れ!FM戸塚。 

 経営の舵取りをする齋藤社長、福原取締役は、参加している「東戸塚西地区街づくり会」のスタッフと共に積極的な放送局づくりに取り組み、近隣のCFM局の視察や経営内容などを分析し、東戸塚という地域が主導するのの、戸塚区全体の組織団体企業そして区民の方々の参画を促すよう努力しています。地域の活性化に繋がる地域情報の発信や地域住民の交流を積極的に推進していくという狙いがはっきりしています。もちろん、災害時の情報伝達ツールとしては、局の方針として明確に掲げています。戸塚区ではこの姿勢を評価して、開局前に「防災協定」を結んだほどです。
 「FM戸塚」のこれからの課題は、どこのCFM局も同じですが、番組スタッフの指導教育の徹底による番組内容の向上である一方、緻密な営業計画や営業施策を展開し、収益確保に努めることでしょう。CFM局の経営の最大の課題は、いかにスポンサーの理解と地域メディアとしての価値を認めてもらうかということですから・・・・・。(了)