第65話 総務省はコミュニティFM放送の増力を検討!

■CFM局期待の電波増力はなるか?

 CFM局を運営している経営者にとって、現状出力20Wを少しでも増力したいのは、偽らざる心情です。過去に関西のCFM局が勝手に増力して放送し、電波法違反の問われた事件があり、CFM業界を驚かせました。それほど増力には関心が高いのも事実です。それが総務省では具体的に検討に入った、と聴けばビッグニュースです。お堅いお役所のこと、そう簡単に上げるとは思えないのですが、今回の処置はある条件下のもとで検討に入ったというのが実態のようです。さて、その内容とは???
 さる4月17日、総務省は「放送普及基本計画の一部改正案等に対する意見募集―コミュニティに係る規定の整備」を発表しました。その要旨は「コミュニティの空中線電力等に関し例外的な措置を可能にするため、放送普及基本法および電波関係審査基準の一部改定案を別途の通り作成しました。つきましたは、本改正案について、平成21年5月18日までの間、意見を募集します。」というものです。コミュニティFM放送の増力を例外的に認める案を発表し、5月18日まで意見募集を行なう」というものです。
( http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/11883.html 参照 )
 今回の改定案の主な内容は、「他の無線局に混信を与えないこと」「世帯カバーのための具術的方法として、増力意外に方法がないか、増力が最適であること」といったすべての要件を満たすコミュニティ放送局であれば、20Wを超える必要最小限の範囲において増力が認められることになります。ただし、FM放送用周波数が混み合っている首都圏や関西圏のコミュニティ放送局は対象外とされています。
 今回、総務省が改訂作業に動いた背景には、市町村合併が進行し、コミュニティ放送局の地域サービスに支障が生まれることやコミュニティ放送局の増力要請が依然強いといった背景があったようです。

■ CFM波の増力ともう一つ大切なこと!

 5月18日締め切りの「意見募集」の内容をどのように判断するか、がこれから注目されることになりますが、意見募集実施後に総務省は、電波監理審議会にこの改正案を諮問し、即日答申を得て決定したい意向のようです。この進め方でいくと今年中には実現するかも知れません。CFM局の増力への道は少し扉が開いたといったところでしょうか。今後の状況は、まず広域ラジオ(民放連加盟のラジオ局)の反応がどのようなものかが注目されます。反対する意見が大きく出てくるのか、それともラジオの役割分担が違うメディアということで、ある程度の歯止めをかける程度の働きかけになるのか、という点です。いずれにしても、CFM局にとって増力が可能なことは、経営上力強い味方であることは確かです。
 しかし、私はもう一つのことを付け加えたいと思っています。それは15年の歩みを持つCFM局が、地域メディアとして大きな成功を収めている局もあれば、10年の経営のなかで少しも地域に食い込んでいない局も結構あるという現実です。県域の民間FM放送を手本として、格好いい番組づくりに精を出し、地域の生活者、地域の組織、団体、企業などの協力を仰げない局がかなりあるということです。こうしたCFM局を見かけると、地域メディアとしてのラジオのあり方を理解していないのではと、心配になってしまいします。しかも5年〜10年と辛くも継続している局が、これから地域の各団体の協力や支援を仰ぐとなると非常に難しさが付き纏います。電波の増力も大事でしょうが、CFM局の地域メディアとしてのあり方を問うことも必要ではないでしょうか。

 CFM局の本質は、地域メディアとしてのラジオの機能をどのように発揮するか、その機能と役割を果たすことで、必ず市民の心に届き、市内の組織、団体、企業に受け入れられていくものです。このCFM局の番組がその地域で評判になれば、地元の団体が認め、経営環境が生まれるのです。そこに県域放送である広域AM/FMラジオと差別化した地域メディアとしてのCFM局経営が可能になるでしょう。放送している現在の電波が、地域社会にコミットメントできる放送を送り続けているかどうか、まず、この点が大切のように思います。デジタル時代に入り、メディアというものが放送であれ、通信(ネット)であれ、また新聞雑誌という活字メディアであれ、本当に多種多様になりました。その結果、メディアを認知させることが非常に難しい時代となっています。それはメディア経営に直結します。それだけに、地域メディアの特色を持つCFM局は、その機能を最大限に発揮してこそメディアとしての可能性が開けるのではないでしょうか。(了)