〔第64話〕 「コミュニティ放送の日」を創りましょう!

ラジオ離れするリスナー対策はいかに!

 民放連に加盟する広域ラジオ(県域ラジオ)は今年に入り101局統一キャンペーンを展開しました。「ラジオがやってくる!」というテーマで1月〜2月にかけて、全国のAM/FM局すべてが参加して行ったキャンペーン企画です。若い人のラジオ離れが著しい状況を食い止め、改めて「ラジオの魅力」を訴えかけようという狙いです。詳しくは当ブログ第59話で紹介しましたので参考にしていただければ幸いです。今回はこのキャンペーンとともに、101局が日頃実施しているラジオ企画の成功例を雑誌「宣伝会議」別冊にまとめられてこのほど発売されました。タイトルは「今こそRADIO!〜ラジオ最新成功事例」です。CFM局にとっても参考となる事例がかなり載っていますので、少々ご紹介しましょう。


■「今こそRADIO!〜ラジオ最新成功事例」の内容

 この別冊は次のような構成となっています。PART1は「ラジオの魅力」と題して人気パーソナリティ17人が体験を語っています。PART2は「ラジオの聞き手」としてラジオの特性をデータから分析しています。PART3は「ラジオの広告」としてスポンサーの視点からアサヒビールコスモ石油など7人がラジオ広告を語っています。PART4が民放ラジオ101社の最新成功事例の掲載。PART5として「ラジオの未来」を専門家2人がメディア論を展開しています。ここではPART2と4を簡単に取上げましょう。

 PART2は「ラジオの特性をデータでみる」と題して、2008年ビデオリサーチが首都圏・関西圏・中部圏を中心に12才〜69才を対象とした調査結果が記載されています。このデータによると、首都圏・関西圏とも〔接触率〕では週に1度は接触する人が70%を占め、中部圏では80%を占める結果となっています。〔聴取場所〕では首都圏関西圏とも大きな違いがなくおおよそ (1)自宅内50% (2)車の中30% (3)車の中以外20%となっています。それに比べて中部圏では少々異なり、(1) 自宅内43% (2) 車の中42% (3) 車の中以外16%となっています。中京圏のリスナーは車の中での聴取が高い特色が出ています。もう一つ特色的なものは、「ラジオが習慣性の高いメディア」を示すデータとして〔平日(月−金)の聴取日数5日以上〕では首都圏がリスナーの内50%、関西圏が54%、中京圏では59% となっています。リスナーの半数以上が週5日余ラジオを聴いている結果です。また「ラジオ局のロイヤリティ」については、3地区とも平日平均70%が1局を選択していることが多い。2局選択は24%、3局以上は6%と少なくなっています。大都市でのラジオ聴取は、自分の好みのラジオ局を選択する場合が多くようです。聴取環境についてコミュニティ放送が調査したらどんな結果がでるでしょうか。一度全国的調査ができると広域ラジオとの違いがはっきりして有用な資料となるのではないでしょうか。


 ラジオは番組とイベントの連携が不可欠だ!

 PART4の成功実例集は、全国101局の実際に展開した実例が122ほど紹介されています。そのなかの2つほど紹介します。

・FM北海道の事例「消費者モニター販促施策〜コレット・アレット探検隊」
  この企画は番組内で募集した消費者モニターが、スポンサー〔イオン北海道〕の店舗イオンショッピングセンターの店頭で見つけたお気に入りの商品をケイタイ写真とコメントをつけて番組HPへアップ、消費者の購買意欲を高め、店頭へ誘導するという企画です。HPで紹介された商品にはスイングPOPを取り付け、訴求を行いました。消費者の「コレット・アレット探検隊」が紹介する商品は1ヶ月後に商品完売という現象がが生まれ、当企画を最初の2店舗から6店舗に拡大することになったそうです。「チラシ広告による純粋な広告訴求からの脱却」という広告主の要望に応えた結果が生まれたといいます。現在FM愛知やFM福岡へも拡大すべく調整中とか。この企画は非常に面白い展開だと思います。番組やスポットというラジオ広告ばかりでなく、販売促進をターゲットである消費者自身にモニターしてもらい、それをHPにアップしていく、正しくラジオが立体的メディアとして展開した好例といえるでしょう。

中部日本放送「エデンpresents CBCドラゴンズスペシャル」 
 モバイル×新聞×ラジオで、野球中継に新価値を付与する企画です。総合家電販売のエデン提供で、中日ドラゴンズデイゲームに合わせ、ラジオ放送当日の新聞、チラシで応援メッセージを募集。リスナーはCBCモバイルサイトに携帯電話からメッセージを書き込む、それを野球中継内で紹介。応募者は抽選で商品が当たる形式です。チームへの応援メッセージは平日200通ほどが、当企画開始で試合前まで640通の増加、試合終了には2078通が寄せられたといいます。広告主は成功で「また行いたい」との反応を示したそうです。ラジオに携わっている方は肌で感じていると思いますが、最近のメディア多様化により、新しい企画を実施するのに、リスナー(消費者)に伝えることは困難を極めます。その意味で、新聞とチラシを告知媒体として使い、アクションをケイタイ電話でHPに書き込みをさせるところがユニークで、このラジオのメディアミックスキャンぺーンは非常に大切であることを知らされます。このほか、当雑誌にはさまざまな事例が載っており、CFM局にとって地域で展開する多くの企画発想が得られます。CFM局の営業担当はぜひご覧いただきたいものです。


 全国的な「コミュニティ放送の日」という共同キャンペーンを!

  いま、コミュニティ放送業界にとって最も大きな課題とは何か、といいますと、「認知率」が低いこと、2つ目はメディア価値をリスナーにも広告主にも示せないことではないでしょうか。もちろんこれは一般的に、ということです。当ブログで紹介してきた沼田市の「FM OZE」や柏崎市の「FMピッカラ」など、町のシンボルとして市民から受け入れられているCFM局が多くあります。しかし、広域ラジオがそうであるように、ラジオ聴取の減少傾向がCFMにも押し寄せているに違いありません。
 そこで、民放ラジオ101局が毎年3月3日を「ラジオの日」として全国ラジオが共同キャンペーン展開をしているように、全国CFM226局が一緒になって「コミュニティ放送の日」を設けて共同キャンペーンを張ることができないものでしょうか。アンジェラ・アキの「手紙」がNHKの合唱コンクールのテーマ曲になり、全国の悩み多い少女を動かし、励ましを与えたように、有名歌手に作曲を依頼し、その曲を全局で紹介し、リスナーに聞いてもらう、「コミュニティ放送の日」には3万人コンサートを展開し全国CFMリスナーに生中継する、そうすれば世間の大きな注目を集めるのではないでしょうか。また、このメイン企画と一緒に、各局が展開する地域企画、例えば上述したFM北海道企画のような「放送番組」と「局HP」と「販促展開(イベント展開)」の組み合わせでリスナーも広告主も自治体も関心を寄せる企画展開があれば、CFMの媒体価値も向上し、大きな成果が生まれるでしょう。毎年開催する「コミュニティ放送の日」からは何かが生まれていく、そうした事実実例づくりが市民の聴取環境を掘り起こし、地元企業、自治体が関心を向ける・・・。CFM・メディアが一層大きく育って行ってほしいものです。(了)