〔第62話〕 コミュニティ放送がPHSケイタイとドッキング!

□ コミュニティ放送ネットラジオ〔サイマルラジオ〕がスマートフォンウィルコム)にサイマル放送を開始しました。音楽が使われたCFM番組をPHSに配信するのは今回がはじめてのケースです。ラジオがいよいよケイタイ電話の一角で聴けるような時代になったのか、と時代の速さに驚きます。今回はこのPHS配信のニュースを紹介しましょう。


■ 「サイマルラジオ」がPHSの「ウィルコム」と提携! 
 去る1月22日、CSRA(コミュニティ・サイマルラジオ・アライアンス/代表:木村太郎)と株式会社ウィルコムは、CFMのネット配信番組をウィルコムスマートフォン向けに提供することを発表しました。「サイマルラジオ」はCFM局の自主制作番組をインターネット配信するウェブサイトで、現在23局が参加しています。ウィルコムは全国16万基地局のマイクロセルネットワークより、パソコン上のインターネットコンテンツ利用をモバイル環境において利用できます。今回の「W+Radio」は、ウィルコムスマートフォン「WILCOM 03」や「W―ZERO 03」シリーズ向けのストリーミングによる配信サービスです。
 「サイマルラジオ」は昨年5月に発足したCFM局用ネット配信ラジオで、神奈川県にある逗子葉山コミュニティ放送(株)愛称「湘南ビーチFM」が中心となり、各局へ呼びかけて創られたネットラジオ放送サイト(CSRA)です。広域ラジオのネット配信は、音楽の権利関係団体と調整がついていないのですが、CFMに関しては纏まり、昨年6月からネット配信を開始しています。もとはといえば、CFMという狭いサービスエリアで電波が届かない場所が生まれる、いわゆる難聴地域ですが、この地域をカバーすることが大きな目的として生まれました。しかし、一度ネットに乗ると全世界へ配信されます。全国レベルでのエリア拡大はCFM局にとって大きなメリットか、それともデメリットかは現在の時点で分りませんが、少なくとも難聴地域をカバーする手段ができ、大きな進歩といえるでしょう。地域メディアであるCFMが地元自治体の協力を仰ぐには行政地域全体をカバーする必要があります。その意味でも大きな一歩です。しかし、ネット配信はパソコンが必要です。それに比べて今回のPHS端末に配信できることは、ラジオの本来持っているモバイル性を補完できるという意味では大きな進歩です。CFMがPHS配信の実績を得たという事実は、これからさまざまな場面で効果を発揮するに違いありません。ところで、今回のウィルコムとサイマルラジオの提携は、PHS配信といってもどの程度の内容なのか、掴んでおく必要があります。その点に少々触れておきましょう。


■ サイマルラジオのPHSケイタイ配信の規模はどんなものか?
 まず、ウィルコムの事業内容です。ウィルコムは、PHSの日本国内におけるシェアは第1位の会社。といっても現在はNTTドコモが2008年にPHS事業から撤退したため、日本国内で唯一の実体事業者となっています。現在のPHS契約数が約456万契約、国内の携帯電話市場(携帯電話及びPHS)における市場占有率が約4.1%で(2008年11月末現在)4位です。(出典「ウィキペディア」サイトより。)現在国内で456万契約を持つウィルコムですが、その端末すべてが「サイマルラジオ」を利用できるわけではありません。発売されたスマートフォン「WILCOM 03」や「W―ZERO 03」シリーズに限定されます。搭載されているブラウザによるからです。したがって、「サイマルラジオ」が聴取できる端末はかなり限定されるわけで、対応できる端末の普及が今後の課題となるでしょう。

 さて、PHSとはPersonal Handy Phone Systemの略で、簡易型携帯電話です。この呼称はかつての呼び方で、法律上はPHSとなっています。伝送方法では現在のケイタイ電話と違いがありますが、利用方法は共通点が多く、PHSケイタイ電話と呼んでいいものです。前述したパソコン上では誰でも聴こうとう意思があれば聴取できますが、パソコンが苦手な方は難しいところがあります。スマートフォンの場合は、上述したように利用がかなり限定されますので、今回の発表は、CFMの放送が「サイマルラジオ」を通してPHSケイタイ電話で聴取可能となった事実、このことに価値があるのではないでしょうか。

 それにしても、一般ラジオでネット配信やケイタイ配信が可能となることを、リスナーも放送局側も大いに期待していると思うのですが、音楽著作権の関係でなかなか進展がみられません。ラジオのネット配信が進まない理由について、昨年の〔サイマルラジオ〕発足記者発表(2008年5月27日)の折り、同席したJASRAC(楽曲を管理している団体)常務理事の菅原端夫氏は、一般ラジオのキー局がネット配信が進んでいない理由について触れていましたので参考までに引用します。「あくまで想像」と前置きして、地上波の番組を全国にネット配信することはネットワーク各社と競合してしまうため、さらに、地域対象にした有力企業のCMが全国配信されることは、広告主からみても好ましくないため、と放送局側の理由をあげています(internet watchサイト参照)。これはかなり表向きの発言のように受け取れます。本質的には放送局側と権利団体の利害の調整できないでいることが原因と思われますが、どうなのでしょうか。広域ラジオ、CFMともども将来の社会的役割、広告料で成立する放送事業を考える時、早く両者が合意に達して、新たなビジネスモデルを創り出さないことには、両者とも大きな損失を被ると思うのですが、皆様はどのように受け止められるでしょうか。(了)