第60話 防災協定を神奈川県下のラジオ11局が妥結!

□ 当ブログ〔第46話〕で、コミュニティ放送局同士が連携して、災害情報提供番組を制作放送している例を、広い範囲から紹介しました。そのなかで、神奈川県下の広域FM放送局とコミュニティ放送11局が連携して、防災番組を放送した事例を取上げましたが、今回この11局が「神奈川FMネットワーク」という災害情報や放送機材などで協力し合う協力協定を結びました。今回はこの内容をご紹介しましょう。


全国初の「神奈川FMネットワーク」妥結
年明け早々の1月8日、FMヨコハマと神奈川県下のCFM10局が「神奈川FMネットワーク」を妥結、調印しました。災害時、広域地区への地域情報を、また広域情報を市町村単位の狭域へ提供することができます。また放送機材が被災し破損した場合の協力などが含まれています。広域ラジオとCFMが防災協定を結ぶのは、全国でも始めてのケースです。FMヨコハマのプレスリリースによると、協定の内容には次の3点が基本です。

 (a)それぞれの放送エリアにおいて、自然災害など住民の生活に大きな影響を与える災害が発生した際、
    または、その恐れがある強い時、各社で情報交換を行う。
 (b)災害時以外の平常時においても、共同番組制作、訓練を兼ねた番組の相互乗り入れを定期的に行う。
 (c)放送機材、要員についても、特定社が災害などで放送機器が破損した場合、お互い協力し合う。

参加放送局は、横浜エフエム放送(株)、逗子・葉山コミュニティ放送(株)、(株)湘南平コミュニティ放送、横須賀エフエム放送(株)、鎌倉エフエム放送(株)、藤沢エフエム放送(株)、かわさき市民放送(株)、(株)エフエムさがみ、大和ラジオ放送(株)、横浜コミュニティ放送(株)、FM小田原(株)、以上11局です。


協定後初の協力番組「防災ワンデイ」を1月17日放送

 昨年9月1日、当防災ネットワークの前哨戦として番組「防災ワンデイ」を放送し、各局が協力し合って防災番組を制作した経験から、今度の協定妥結へと繋がったものですが、今回は更に綿密な放送を心がけて放送するといいます。具体的には次の通りです。

 (a)放送番組名「防災ワンデイ」(午前9時〜午後6時55分)FMヨコハマがメインとなって、
    自局の4ワイド番組を連携して、約10時間の 放送をする。内容は土曜日のデイタイムである
    ことから運転中の“ドライバー”を強く意識した情報提供とする。
 (b)番組内では、「神奈川FMネットワーク:防災メッセージ」と題して、CFM10局から
    各地域の防災への心構え、立地条件の異なるエリアことのきめ細かい情報などを提供する。
    これらのメッセージは1時間に1回の割合で放送、また、「神奈川FMネットワーク」の
    協定内容なども伝えていく。
 (c)CFM各局は、FMヨコハマの番組に協力することが中心で、今回は自局の番組では
    放送しないという。

以上が今回のFMヨコハマの番組「防災ワンデイ」の内容です。「神奈川FMネット」が誕生した以上、広域ラジオの役割りと狭域ラジオであるCFM局の役割りが、番組内容に直接現れるともっと有意義な連携となることでしょう。


■ 災害放送で広域ラジオとCFMが連携する意味

 「神奈川FMネットワーク」が、広域ラジオとCFMが連携する始めてのケースになることは、いろいろな意味で興味深いものがあります。それは「広域ラジオ」という広いサービスエリアをもつ放送の役割と「狭域ラジオ」であるCFMの役割は、自ずから違います。その違いを乗り越えた「神奈川FMネットワーク」の意義はどこにあるのでしょうか。

 まず、民間ラジオ放送情報提供について触れておきますと、広域ラジオの報道に関する情報は、各局共に〔報道部〕ないし〔情報センター〕といった部署があり、通信社提供のニュースや各種情報、そして各局独自の情報網、独自の取材などによる情報収集などがあり、報道を行います。CFMの場合は、大方が通信社、新聞社からの一般情報の提供と市役所、商工会議所など独自の情報網から地域情報を収集しています。こうした民放ラジオの情報提供から広域ラジオとCFM、それぞれのメリットを考えると次のようになると思います。

 (a)広域ラジオはサービスエリアが広いことから全国情報および県内情報を主に伝えているが、
    地域情報はなかなか得られない。その意味で、CFMとの連携は、地域情報の詳細を入手できること、
    およびネットワークを活用した取材展開が可能となる。広域ラジオは地域情報の入手範囲が広がる点で
    大きなメリット。

 (b)CFMが地域情報を広域ラジオに提供することは、地域出身者、地域以外就学者、勤務者、
    あるいは地域以外に住む家族・友人・知人、関係団体などに対して、地域情報を詳しく提供できること。
    現在住民生活者は生活行動範囲が非常に広くなってきており、地域情報を地域外にどのように提供するか、
    大きな課題となっている。このツールの1つとしてCFMにとっては大きなメリット。

 こうした広域ラジオとCFMが抱えている課題を解決していく方法として、広域ラジオとCFMとが協力協定を結び、広域にも、狭域にも災害情報が提供できることは、大きな意味を持ってくると思います。CFM局サイドから見ると、防災に力を注いでいる局、たとえば自治体主導型CFM局や商工会議所主導型CFM局などは比較的理解し易いのに対して、地元企業や有志によるCFM局など、放送の独自色を求めるあまり、災害時の対応策、情報収集、提供システム、自治体との連携方法などに手薄なところがあります。この辺がCFM局の難しいところです。地域メディアとして捉えるか、広域ラジオのスタイルをCFM局で尊重するのか、事業者の判断によるところが多いところです。CFM局が災害時のメディアであるところは論を待ちませんが、同じように平常時も地域密着メディアとして必要不可欠な存在です。このあり方を各方面に理解してもらうためには、県庁であり、市町村の自治体が積極的な参加が望まれます。「神奈川FMネットワーク」防災協力協定調印式には、神奈川県松沢成文知事が参列したそうですが、これはCFMを理解してもらうには絶好の機会になったと思われます。(了)